文鳥と暮らすための本

1章 ヒナとの生活

6、給餌の方法

・給餌は手のひらに乗せて

・給餌の時間割を生活に合わせ設定する

・フン(糞)には注目しないで良い


給餌は手のひらに乗せて
後ずさりして落ちないよう

ヒナへの給餌(きゅうじ)の際は、手をよく洗って乾かしてから、手のひらに乗せて行うと良いでしょう。
 ヒナが複数いる場合は、お互いの鳴き声などで刺激し合って、争うように大きな口を開けて首を伸ばしてくるので、容器の中にいても給餌しやすいです。一方、1羽の場合は、待ち時間なくエサが食べられ、鳴いて要求する必要がないので、積極的に食べてくれなくなってしまうことが多く、手のひらに乗せていないと、与えにくくなってしまいます(「有識者」と見なされがちな繁殖家の人たちは1羽飼育のことを理解していないことが多いです)。
 人間の手のひらはヒナの体温より低いので、手のひらに乗せておくと冷えてしまうと心配する人もいるようですが、過度に心配する必要はありません。なぜなら、人間はぬくもりの元になる赤外線を発散していますし、皮膚は熱を吸収するようには出来ていないので、手のひらが多少冷たくても、冷やす効果は一瞬でしかないからです。たとえば、30℃程度で発熱する電気カーペットのようなものに、座布団を乗せた状態、と考えて良いかと思います。室温に比例して座布団の表面温度は、冷たくなっていて温かいと感じられるほどではないかもしれませんが、そこに座った人のお尻から熱を奪い続けることにはなりません。それどころか、赤外線でじんわり温まり、また、布団に自分のお尻の熱がこもることで、すぐに温かくなるはずです。
 もし、冷え性などで手が極端に冷たくて心配なら、手袋をしても良いでしょう。奇妙な思い込みをしたり思い込みだけの情報に惑わされたりせずに、右利きなら、左手の手のひらにヒナを乗せ、与えやすい位置で、ヒナの様子を間近に見て確認しつつ、あわてずに給餌を行ってください。ただし、手のひらが汗ばんでヒナを濡らしてしまうと、熱を奪うことになってしまうので、その点は注意したいところです。

給餌図
浅すぎず深すぎず

ヒナへの給餌では、先端の1、2センチほど湯漬エサを詰めた給餌器を、ヒナの舌の付け根あたりに斜めに入れる感覚で挿し入れ、エサを押し出します。お腹がすいたヒナの場合、給餌器を飲み込むように首を伸ばしてくるので、その場合は、給餌器を引き加減で与えるくらいになりますが、1羽の場合、それほど積極的ではないことが多いです。何しろ、口を開けば、兄弟姉妹への給餌を待つこともなく、すぐにエサがもらえますから、せがんで鳴く必要もその暇もありませんから、むしろ鳴き声を聞かなくなるかもしれません。「ウチの子は鳴かない」と思えば、それは病気などのサインにも思えてしまいますが、しっかり食べていて、体重が減り続けるわけでもなければ、それは「ひとりっ子」として、当然な状態と見なして良いでしょう。
 口に入れる加減などは、説明されても身につきませんから、自分で注意深く試行錯誤して、コツをつかみましょう。例えば、おっかなびっくりとして、ヒナの舌先にエサを乗せてしまうと、ヒナが飲み込めず、首を振ってふるい落とすことになって、その様子を初めて見れば、あわててしまうはずです。しかし、その程度の失敗で、ヒナの生命に危険が及ぶことは、ほとんど有りませんから、ちょっとした失敗は経験と考えて、ヒナの様子を見ながら、無理をせず、手加減を自分自身で感覚をつかんでみてください。

また、「ひとりっ子」の場合、積極的に口を開かないことになりやすいので、その際は、クチバシの両サイドにある「口角パッキン」あたりを、給餌器でつついて刺激してみましょう。
 育雛経験がないと、いろいろと不安に思いがちですが、あわてず、あせらず、ヒナの様子をじっくり見ながら、給餌を楽しみたおところです。


給餌間隔の一例(我が家の実例です)

給餌の間隔や回数についても、いろいろな考え方がありますが、1日4、5回、同じ間隔で与えるのが、昔から経験的に続く一般的な方法のようです。我が家では、朝7時30分から夜9時30分まで、3時間半間隔で5回与えるのを基本にしています(→図は、念のため壁に貼っているものです。都合により4回にすることもあり、その場合右のようになります)。この場合、5回目には、すでに満腹状態であまり食べないことが多いので、4回目でやめても良いものと思います。なお、1度の給餌に要する時間は、エサの準備を含めても10分程度です。
 日中、3時間半の間隔を守るのが難しくなり、1回抜けてしまう事態となっても、アワ玉主体のエサは腹持ちが良いので、度重なることさえなければ、さほど問題にはなりません。また、ヒナは、給餌時間以外は、暗く温かな場所で安静に眠っているはずなので、仕事の都合などで、昼夜を逆転させて夜間に給餌するようにしても、ほとんど負担をかけることにはなりません。このように、文鳥ヒナの給餌の時間割は、こうでなければ育たないほど厳密なものではなく、モデルケースにこだわる必要はありません。消化できるだけの就寝時間(10〜14時間程度)があり、その就寝時間前にお腹が満杯な状態にできる自分なりの時間割を考えましょう。

例えば、18時00分、21時30分、1時00分、6時00分の4回とすれば、通勤通学があっても、手乗り文鳥を育てることは可能かと思います。寝不足になり大変ですが、孵化4週間ほどに育ったヒナなら、給餌期間は2週間未満です。文鳥のヒナが、毎日ぐんぐん成長する姿は、興味深いものですし、自分で育てた文鳥には、それだけ特別な思い入れが強まるものですから、少し無理をしても、自分で育てる価値はあるものと思います。

 

なお、食べる量は一定ではありません。ヒナの体質や体格によって異なり、同じヒナでも、1日の中で、1回目と5回目、最初と最後はあまり食べず、2〜4回目にたくさん食べることが多いです。1回目は控えめ、2回目はそれなり、3、4回目は食欲旺盛、5回目は気持ちだけ、そのようにして、そのうが大きく膨れた状態で就寝し、翌日には空っぽな状態になっていれば、おおむね健康と考えて良いでしょう。
 体重は、毎日1回、エサを与える前の空腹状態か、就寝前の満腹状態のいずれかの時点で測ると良いでしょう。ただし、体重は、徐々に増え続けるものではありませんし、家庭内で使用する計測器(キッチンスケール)では、1グラム程度の誤差は避けられません。だいたいは、孵化20日目あたりまで増えていき、その後の一週間ほどは、ほぼ一定となり、飛行するようになると少し減り、筋肉がついてくると少しずつ増えていく、といった変遷をたどるのが一般的です(4節のグラフ青のパターン)。したがって、ペットショップなどで十分にエサが与えられていれば、羽が生えそろっているほど成長したヒナの体重は、増えないのが当たり前で、逆にどんどん増えていくようなら、それまで栄養が足りていなかったことになります。

ヒナの体調は、最初の給餌の際に、そのうが空になっているか、活発に動くわけでもないのに体重が減っていくようなことはないか、この2点のみで確認して、異常があれば、早めに、保温に気をつけつつ、小鳥の診療を得意にする獣医さんがいる動物病院を、受診すると良いでしょう。なお、フン(糞)に注目するように、アドバイスされることもあるかもしれませんが、初心者には、すべて異常に見えてしまい、かえって混乱するので、気にしない方が良いです。例えば、必要量以上に食べれば、消化されずにアワ粒の状態でフンに混じることにもなりますが、それは特に異常とは言えないのです。また、それが病気などの異常によるものでしたら、そのうにエサが残ったり、体重が減少する事態も避けられないはずですから、そちらで判断しましょう。

 

 

文鳥ヒナの「歯固め」行動

 離乳期の赤ん坊は、いろいろな物をかじりたがり、それは噛むために歯茎を丈夫にする行動とも見なされ、それは歯固めとも呼ばれ、歯固めトレーニング用の幼児グッズもあります。この「歯固め」に相当する時期が、文鳥にもあります。
 もちろん、小鳥に歯はありませんが、自分で食べるためには、クチバシでつまんだりかんだりする動きは必要になります。したがって、本能的に、孵化20日を過ぎた頃から、
やや硬く歯ごたえのあるものをかじって、クチバシの動きを訓練するようです。
 アワ玉などの食べ物をかじることもありますが、食べるためではなく、かじりたいだけですから、牧草やつまようじのような物の方が、効果的と思われますし、ヒナにも喜ばれます。給餌を終えた後、数分間、歯固めのカジカジ遊びをしても良いでしょう。


孵化30日目のヒナ

 

 

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