文鳥と暮らすための本
1章 ヒナとの生活
・ 給餌するための器具とエサ
・ 冬は保温のための設備と温度計
ヒナ飼育グッズの例 |
しかし、保温性や保湿性を考えると、昔からヒナの飼育に用いられ、今も市販されているフゴ(ワラ製のオハチ)に2、3センチの厚さで牧草などを敷く方法がお薦めとなります。ただ、使用期間が数週間だけなので、大きくなった後も運搬用などに使用できるキャリーケージやマス箱に敷材を入れて代用する飼い主も多いです。
敷材は保温のため、またヒナが糞(フン)で汚れないために必要です。ティシュペーパーを使用される飼い主も多いですが、稲ワラやチモシーなどの牧草の方が、自然な保湿効果を期待できてお薦めです。特に、底にシートタイプの保温器(ヒーター)を使用する場合は、短くカットされた牧草や木材チップなどの敷材の方が、ヒナ自身が敷材にもぐったり表面に出たりして温度を調整しやすいという利点があります。
※上の写真には、フゴ、シート式ヒーター、デジタル温度計、栄養補助フード・アワ玉・おちょこ、『育て親』が写っています。これだけでも文鳥のヒナを飼育できます。
フゴで遊ぶヒナたち |
文鳥のヒナには、市販のアワ玉(皮をむいたに玉子の黄身などをまぶしたもの)を湯漬けし、補助的な栄養粉末や青菜などを加えて、プラスチック製の給餌器(商品名『育て親』)の先端にトントンとつめて与えるのが一般的です。生後十日以上のヒナには、親鳥も消化したものではなく、食べて一時的にのどに貯まっているエサを吐き戻して与えるので、内容的には人間が与える湯漬けエサとあまり変りありません。補助的な栄養粉末については、後で詳しく述べますが、特にこだわりがなければ、市販されているものを利用しても良いでしょう。
通常は必要ありませんが、孵化10日未満の幼いヒナや病気がちで消化吸収が悪いヒナ、また将来的にペレット(固形状の人工餌、犬にとってのドッグフードと同類)を主食にする予定の場合は、より吸収の良い鳥のヒナ用のパウダーフードをお湯に溶き、注射器(シリンジ)などで与えることになります。
湯漬けエサを作ったり、パウダーフードを溶いたりする際に、ちいさな容器があると便利です。その点、陶器製のおちょこ(お猪口)は、熱に強く使いやすいと思います。
まだ羽毛が完全に生えそろっていないヒナの頃は、寒さにとても弱いです。寒いと胃腸の働きも弱くなってエサを消化できなくなり、すぐに危機的な状態になってしまうので、寒い時期にヒナを一羽だけ飼育する時には、必ず保温の準備をしておきましょう。
ヒナには容器の底に敷くシートタイプの保温器が便利です。ただ、止まり木で生活するようになると、床の一部を温めても意味がなくなってしまいます。そこで、おとなになっても使用しやすいヒヨコ電球などの保温器に、サーモスタット(温度調節器・・・設定温度を超えると保温器の電源を切り、下回ると電源を入れて温度を一定に保つ機器)を接続するような方法でも良いでしょう。
限定的な床暖房ではなく、保温器で一定の空間を暖める場合、ヒナを入れる容器の周囲がある程度密閉されている必要があります。プラスチックやガラス製のケース、もしくは木箱のようなものに、フゴなどの容器や保温器を入れると良いでしょう。また、飛べるようになってから使用するケージ(鳥カゴ)をビニールなどで囲って簡易温室を作ったり、それほど費用をかけなくとも、いろいろ工夫できるものと思います(下図はアクリルケースを使用した真冬に一羽を育てる際の例【上部ヒーターのコンセントはサーモスタットに接続)。その際は、保温器が正常に稼動しているか、最低・最高温度を記録できる温度計などで、設定温度を大きく越えることはないか、温度計を使って事前に調べておくと安心です。
なお、使い捨てカイロは温度むらが生じやすいので、緊急時以外は、使用を避けたほうが良いでしょう。
保温室の一例 |
保温室の一例 |
移動の際にかさばったり、フタが外れるような心配がある場合は、下の例のように運搬用のケースを自作しても良いでしょう。この際は、ペットショップ→駅・電車→自転車→自宅といった順路で、使い捨てカイロを仕込んだ肩掛けカバンに入れて移動しました(自転車の前カゴは振動が激しいので、肩掛けか背負いカバンが無難です)。
100均で売られていた密閉容器の フタ部分に息抜きの穴を数箇所開け テッシュペーパーを敷き詰め、 ヒナの上にも軽く1枚のせています。 |
左の状態からフタを取り、 上掛けティッシュを寄せたところです。 1時間10分の移動時間でしたが、 特に問題ありませんでした。 |
適温と適湿? 羽が生えそろっていない孵化して3週間未満のヒナでは、温度27〜30℃ほどあったほうが良いです。3週間を経過して、動き回るようになれば、25℃程度で問題なくなります。 温度を上げると、湿度が下がってしまいます。乾燥しすぎは健康に良くないので、濡れタオルやスポンジなどを容器の近くにおいて、乾燥しないように注意しましょう。 ただし、70パーセント以上の高湿度にする必要はありません。孵化間もない赤むけのヒナは、軟らかで乾燥しやすいため、高湿度の状態を保つ必要がありますが、お店で売っている孵化3週間以上経過したヒナは、羽も生えてきて乾燥に耐えられるようになっているので、高湿度の環境は必要ありません。むしろ、高温多湿の環境はカビが発生しやすいので、有害にもなってしまうので、避けるべきでしょう。 人間と同様で50〜60パーセント程度を念頭に、さほど厳密に考えず、乾燥しすぎない程度の配慮をしておけば問題ありません。 |
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