文鳥と暮らすための本

1章 ヒナとの生活

4、 ヒナの成長度チェック

・ 購入したヒナの誕生日は飼い主が決める

孵化24日目頃までは羽毛の生え方に注目する

・ 体重で判断しない

 

ペットショップでは、ヒナがお店にやってきた入荷日はわかっても、正確な誕生日(孵化【ふか】日)はわかりません。生後どれくらいか、ある程度の目安を店員が見て判断して欲しいところですが、店員の文鳥に関しての知識量はそれぞれですから、不正確な情報で、かえって誤解を与えてしまうことも多いようです。
 文鳥のヒナの成長はとても早く、一日でもその外見や行動は変わり、数日では大きく異なってしまいます。孵化からの日数によって、接し方やヒナの行動の持つ意味も違ってきますから、飼い主自身が自分のヒナの外見を観察し、しっかりと成長段階を把握して、より正確な誕生日を決めましょう。
 そのためには、羽毛の生え方に注目しましょう。病気や極端な栄養失調でない限り、羽毛などの成長スピードは、ほぼ一定ですから、かなり正確な誕生日がわかると思います。

孵化16日目
孵化17日目 孵化18日目
孵化16日目 孵化17日目 孵化18日目
孵化19日目  孵化20日目  孵化21日目 
孵化19日目 孵化20日目 孵化21日目
孵化22日目  孵化23日目  孵化24日目
孵化22日目 孵化23日目 孵化24日目


孵化27日目
孵化27日目、「出撃」準備中!

孵化18日目(孵化当日を1日目として数える)までは、坊主頭の印象で、胴体部分の羽毛もまばらで赤い地肌が目立ちます。また、尾羽がとても短く、ほとんど鞘に包まれた状態になっています。翼羽も先端部分の羽が見える程度で、根元の方は鞘に包まれているものも多いです(このような状態の羽毛を筆毛【ヒツモウ・ふでげ】と呼ぶ人もいます)。なお、この頃までは、目も眠たげで、文鳥的なキラッと光る瞳の輝きはまだ感じられません。
 孵化20日目頃になると翼羽は鞘が取れてほとんど開き、尾羽も長くなり先端部分は鞘から飛び出してきます。そして、胴体部分にも羽毛が生え、頭もいがぐり状態になり、目つきも意志を持つ力のあるものに変わります。
 孵化24日目頃には、両頬とアゴ以外はほぼ羽毛が開き、尾羽も形を整え、モコモコした軟らかく温かそうな姿になります。

 

孵化26日目頃になると、脚がしっかりして立てるようになり、羽ばたきの練習を頻繁にするようになって、歩けるようにもなります(両脚をそろえてピョンピョンはねるホッピングではなく、左右を交互に動かす歩き方)。床に下ろすと尻餅を付くような姿勢になり、また、フゴのヘリにうまく止まれなければ、まだ孵化26日までにはなっていない、と考えられます。

 また、通常、孵化28〜30日目には飛べるようになるので、飛ぶことが出来れば、孵化1ヶ月になっていると推定されます。

 

孵化34日目
孵化34日目

その後は、徐々にクチバシの両端の白っぽい部分(「口角パッキン」)が縮小していき、桜文鳥やシルバー文鳥のヒナでは、黒いクチバシが色あせていき、生後1ヶ月半を過ぎる頃には、頭頂部付近からおとな(成鳥)の羽毛に生え変わるヒナ換羽(カンウ・とや)が始まるのが平均的な経過となります。個体差があるので、正確ではありませんが、もし、口角パッキンが目立たず、すでにヒナ換羽が始まっているなら、すで孵化2ヶ月は経過していると推定して、間違いないでしょう。また、ヒナ換羽は遅くなることもあるので、ヒナ羽毛を多く残していても、口角パッキンが見当たらなければ、すでに生後3ヶ月は経過していると考えて良いでしょう。
 口角パッキンが縮小することは、口を大きく開けて親鳥からエサをもらわなくても、自分で食べられる(=ひとり餌)成長段階になっていることを意味します。従って、時間の都合などで差し餌が難しい場合、口角パッキンが縮小するまでに育ったヒナを探すと良いでしょう。ただし、口角パッキンが見当たらないまでにお店で成長したヒナは、長らく人間と遊んでいないため、人間に対して不信感を持っている可能性も大きいので、不信感を解いてくれるまで時間がかかることを覚悟しましょう。

 

※この上下のクチバシが大きく開くための「口角パッキン」を、インターネットを利用する文鳥愛好者の一部は、馬蹄斑【ばていはん】と呼ぶのが正しいと認識していますが、文鳥愛好者以外が使用することはないようです。鳥の種類によって、ヒナの口角の形は異なり、必ずしも馬蹄もしくはU字やΩ(オメガ)を横にしたようには見えないため、学術的には口角隆起とか口角フランジ【突縁】といった表現が使われるようです。個人的には口角にあって上下のクチバシの継ぎ目になっているゴムパッキンを連想させる質感のもの、といった意味で「口角パッキン」と表現します(パッカ〜ンと口を開くことが出来るので、「口角パッカ〜ン」でも良いかと思ったのですが・・・)。

孵化30日目 孵化41日目  孵化52日目 
上の3枚は孵化30日目、41日目、52日目の横顔です(※このページの写真はすべて同じ文鳥)。
徐々にクチバシの色があせ、口角パッキンが縮小しています。


 なお、文鳥は比較的に個々の体格差が大きな生き物です。小柄なら21グラムがその文鳥のベスト体重で、大柄なら31グラムがベスト体重になることもあります。もちろん、24〜27グラムくらいの文鳥が多いですが、それは標準的な体格の標準的な体重と言えるだけで、体重だけで痩せているか太っているか、判断はできないのです。同様にヒナの時も、体重のみで、孵化何日目か判断するのは不可能です。小柄な体格のヒナと、大柄な体格のヒナでは、体重が違っているのが当然なのです。
 下の折れ線グラフの青・緑・ピンクは、ほぼ同時期に我が家で生まれ、我が家で同じ条件のもと育った、親鳥の異なるヒナ3羽の体重の変遷です(1日の最後の給餌終了後の満腹状態で計測。空腹時は2〜3グラム少なくなります)。体重が最大で4グラム異なっていますが、これは持って生まれた体格差と見なせるでしょう。
 ただし、小柄であっても、健康な成鳥の体重が20グラムを下回ることはまずありませんから、羽毛が生えそろった孵化20日目以上と思われるヒナの体重が、満腹時に15グラム程度しかない場合は、病気(トリコモナスなど)の可能性が大きいと考えたほうが良いでしょう。

 

 

※オレンジ色の仔は、ペットショップで購入した、推定孵化18日目のヒナの体重変遷です。
 購入時の体重が軽く、繁殖家やお店での給餌内容が不十分だった可能性が大きいですが、最終的には、やや小柄な平均レベルに成長しています。


※ オレンジ色の仔の迎え入れた当日の様子です。
羽毛の様子、特に丸で囲った部分、尾羽の先端の様子と、翼の骨格近くの羽毛(雨覆)の様子から、孵化18日目と推定しています。
 

 

 

幼いほど仲良くなれる?

 通常、お店で売っているのは生後3〜4週間のヒナですが、より親しくなるためには、さらに幼いヒナの時から育てるのが良いのでは?と考えて、探す方もいるようです。 
 確かに、より幼い頃から、自分で給餌(差し餌)したほうが、飼い主としての自覚が生まれ、その文鳥に対する愛着は深まるかもしれません。また、お店より家庭の方が、行き届いた世話ができるはずですから、あまり長くお店に居続けるよりもヒナの健康にも良いと思います。
 しかし、オトナになった
文鳥と飼い主が、1対1でとても親密になるのは、文鳥が飼い主に対して恋愛感情をいだいた結果なので、より幼い頃のことはあまり関係ありません。これは、人間と同じではないでしょうか?大人になってから付き合う相手を、幼友だちの中だけから選ぶことは、あまりないはずです。
 文鳥も、生後半年を過ぎ思春期になると、幼い頃にエサをくれた人以外で(例えば飼い主の家族の誰かです)、好意を寄せる相手を見つけることも多いです。相手の気持ちがあることですから、飼い主側が早い段階からがんばってもダメで、一番世話をした人が愛してもらえるとも限らないのです。
 このことは、逆に、生後一ヶ月を過ぎて飛ぶようになっていたり、さらに自分でエサが食べられるまでに、お店で差し餌されて成長した文鳥でも、そこから愛情を込めて接していれば、
恋愛関係になる可能性は、自分が差し餌をして育てたのと、変わりがないことを意味します(幼い時期に虐待的な扱いを受けると人間不信になってしまい、不信感を取りのぞくのに時間がかかることもあります)。出会いが遅くとも、ほとんど問題にならないわけです。
 手間暇かければ恋愛はうまくいく、と言うものではありませんから、よりか弱い状態の幼いヒナをわざわざ求めるよりも、健康で元気なヒナを探し、そのヒナに嫌われないように接することを心がけたいものです。

※ 繁殖したヒナを売る、繁殖農家や繁殖家(ブリーダー、昔は「巣引き屋」と呼ぶ)が、親鳥の元からヒナを引き取るのは、通常孵化10〜14日目です。10日目と早くする場合、その目的は、親鳥に早く次の産卵を始めさせるためで、文鳥の健康面に配慮したものではありません。
 繁殖サイドの生産性向上のために、比較的に幼い状態で親鳥から離されたヒナは、輸送に耐えられないほどか弱いなので、繁殖家などが数日差し餌で育ててから出荷されるのが普通のようです。
   まだ幼く未熟な人を、「クチバシの黄色いひよっ子」などと言いますが、幼い頃の文鳥のクチバシの内周や口蓋(こうがい)は確かに黄色です。これは、薄暗い巣の中でも、開いた口の位置を親鳥が見定めやすくするためです。 



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